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★ マイ・フェイバリット・ドラマー:サイモン・フィリップス


残念ながら、ここ最近のプレイは、最盛期のものと比べると、かなり生彩を欠いている気がします。


どうも思うんですが、ドラマーにも「旬」というものがあるようで、しかも、非常に有名な人でも、その「旬」が短かった人が意外に多く、ところが、名声だけは長く続くので、とっくに「旬」が過ぎているのに、「凄い凄い」と言われ続けて、それを信じて聴いてみた人が首を傾げる…という事態が多々起きている気がするんですよ。(*1)

サイモン・フィリップスの場合も、最盛期のプレイを知らなければ、「両利きの器用な優等生ドラマー」とかいう評価だけで終わってしまう可能性が非常に高く、実際、あちこちで、そのような論調を見かけますからね。

そのたびに僕は、「あ〜もう、違うっちゅーに!」と思ってしまうんですが…と、まあ、それは置いといて、サイモン・フィリップスとの出会いから書きましょう。







*1 超有名な人に限っても、トニー・ウイリアムス,エルビン・ジョーンズ,マックス・ローチ,アート・ブレイキー,ビリー・コブハム…等々と、挙げればキリがありません。
 これらの人々は、皆、「旬」の最中のプレイを聴かなければ、本当の凄さ・良さが分からないドラマーなんですよ。
 だけど、残念な事にたぶん、「旬」の時期のプレイを知らないまま、「この程度か…」と思っちゃってる人も非常に多いんじゃないでしょうか?

初めて聴いたのは、1980年。ジェフ・ベックの『ゼア・アンド・バック』です。まず驚いたのは、そのサウンドとノリが非常に独特だったこと。

タムやバスドラムのチューニングが異常に低く、サスティンも短くて、ハイハットのオープンなんか、毎回サンプリングで鳴らしてるんじゃないかと思うくらい同じで、ノリも非常に機械っぽくて、なんというか、音符が全部「真四角」な感じ。

だから、第一印象は「サイボーグじゃねえのか?」でした。



でも当時は、フュージョン系ドラマー達の緻密で正確な演奏と比べて、たいていのロックドラマーの大雑把さが嫌になっていたんで、ロックドラマーなのに、フュージョンドラマーに負けないテクニックや正確さを持った人が出て来たと思って、「今後、要チェックだな」と。(*2)

で、その後、友人に、マイケル・シェンカーの『アームド・アンド・レディ』(スタジオ盤)を聴かされて、それまで耳にした事の無い、物凄く緻密で正確で、それでいてパワフルな8ビートにビックリして「これ誰!?」「え〜と、サイモン・フィリ…」

その瞬間に「要チェック」から「絶対チェック」に昇格ですよ。当時の僕にとって、フュージョンのテクニックと、ロックのパワーを両立させたスタイルというのは、一つの理想でしたからね。

もちろん、それ以前にも、ビリー・コブハムや、ナラダ・マイケル・ウォルデン。トニー・ウイリアムス、テリー・ボジオ、ニール・パートなんかがいたわけですが、コブハムやナラダは変態過ぎ(笑)、トニーはジャズの香りが強すぎ、ボジオやパートは、ロックにしては知的過ぎるアプローチが、僕にはダメでした。

そこに、メンタル的には完全にロックドラマーだけど、テクニックではフュージョンドラマーを軽く凌駕するサイモン・フィリップスが出て来て、ピッタリはまったんですよ。

しかも、自分が左利きである事に悩んでいた時期でしたから、両利きで、オープンハンドでプレイする人だと知って、「まんま理想じゃん!」と思ったわけです。

もっとも、当時の僕にとって、『スペースブギ』なんかは難し過ぎてどうにもならなかったんで、フレーズのコピーこそ、あまりしてないですが、かなり影響受けましたよ。

この人の教則ビデオの時のタムの音なんか、そのまんま僕の理想の音で、今レッスン室に置いてあるタマのドラムセットを買ったのも、同じタムの音が欲しかったからですし、ヘッドホンを固定するためのヘアバンドとかまで真似してました(苦笑)。

で、そんなサイモン・フィリップスの「最盛期」は、一体、いつなのか? という事になりますが、僕が思うに、1980年代中盤〜90年代始めなのではないかと。そして、個人的に最高だと思うのが、88年にミック・ジャガーのツアーで来日した際の、TV放映された東京ドームでのライブです。

ちなみに、この時のライブは、僕が今までに目にして来た、あらゆる映像化されたライブの中でも、最も優れたライブだと思ってます。(実際にドームで聴いた友人は、音が悪すぎて楽しめなかったと言ってましたが…)

日本がまだバブルの真っ最中で、よほどギャラが良かったのか、ミック・ジャガーを始めとしたメンバー全員が、やけに楽しそうに演ってるんですよ(笑)。






*2 今でこそ、デニチェンみたいに、並のロックドラマーが吹っ飛ぶパワーを持った人もいますし、コブハムやガッド、ハービー・メイスンなんかも、みんな実はパワフルなわけですが、当時の国内は、パワーはあってもテクニックの無いロックドラマーか、テクニックはあってもパワーが無いフュージョンドラマーばかりでしたからね。


ライブ全体としては、大会場で演ってるにしては、あまり綿密にリハがされた様子もなく、かなりラフなんです(*3)が、その分、メンバー全員が、地元のライブハウスで演ってるみたいにリラックスしていて、ナチュラルにノリノリで。

最近の大会場ライブでは当たり前の、ステージの後ろに巨大なスクリーンを設置して映像を流すとか、凝ったライティングとかは全然無いのに、一人一人のメンバーの、演奏とステージングだけで、もう充分以上にカッコイイんです。

そして、その強力なアンサンブルの原動力になっていたのは、間違いなく、サイモン・フィリップスのドラミングであり、1曲目の『ホンキー・トンク・ウーマン』のイントロ、ピックアップのフィルから、無茶苦茶グルーヴしてカッコ良かった。



*3 エンディングの回数を決めて無かったらしく、ミックがキメのポーズを取る前にバックの演奏が終わっちゃったり、観客サービスのためにアリーナの中央から登場したミックが、揉みくちゃにされてステージに帰って来れなくなって、延々イントロの演奏が続いたり…とか。


☆ミックジャガーin東京ドームのサイモン・フィリップス


『ゼア・アンド・バック』の頃は、「サイボーグ」だったサイモン・フィリップスが、テクニックはそのままに「熱い血の通った」グルーヴメイカーに進化してて、当時感じたままの表現で言えば、現在世界最高のロックドラマーだと思いましたからね。

非常にグルーヴィーで、かつ、音色もフレージングも、いちいちカッコ良くて、文句無しに素晴らしいドラミングだった。

録画したビデオテープを、もう、100回近く見直してると思います。自分で見るだけじゃなく、友人が来るたびに見せてましたからね。こんなに良いライブが、DVD化されていないのは非常に残念です

もう、すっかりサイモン・フィリップスに狂っちゃって、ソロ・アルバムの『プロトコル』や、2本の教則ビデオもすぐ買ったんですが、残念な事に、このあたりから、もう旬が終わりかけてて、だんだん、プレイに生彩が無くなって来るんですよ…。

教則ビデオでは、イメージと違って「天然キャラ」だという事が判明したりして面白かった(*4)ですが、デモ演奏のあちこちに「おっと…」というミスがあったり、流麗なドラミングをする人だと思ってたのに、時々叩き方が力みまくってギクシャクしてて、「意外に不器用だな」と(苦笑)。

今から振りかえって考えれば、それこそが、旬が終わりかけていたサインだったのかも知れません。

*4 4小節に1回9/8が入るだけの曲を、自信満々に「8分の33拍子だ」と紹介してたり、「バスドラムのヘッドを伸ばすには
上に乗って飛び跳ねると良い!」と実演して「まだ突き破った事はないよ(^^)!」
 良くも悪くも、ドラムキッズが、そのまま大人になったという感じの人ですね。


最近になってから、ずっと若い頃のドラムソロ映像を見たり、ベックやスタンリー・クラークとのツアー(*5)の音源を聴く事が出来ましたが、身体の動きもしなやかで、テクニックやスピードの面では、圧倒的に若い頃の方が上手かったです。

ジェフ・ポーカロが亡くなった後に、スティーヴ・ルカサーが、夢のお告げ(?)で、サイモン・フィリップスを選んだと聞いて、当時は、「それ、大正解!」と思ったんですけど、残念ながら、古くからのTOTOファンには、あまり評判が良くないようで。

まあ、今のサイモン・フィリップスじゃあ、しょうがないですね…。ジェフ・ポーカロの場合は、亡くなった頃に、ちょうど円熟というか、まだまだこれからっていう感じでしたから…。

残念ながら、今後の大活躍は期待できそうにないですが、ごく短い間とはいえ、サイモン・フィリップスが「最高のロックドラマー」だった時期があったのは確かですから、90年代後半以降のプレイしか知らない人には、ぜひ、80年代までのプレイを聴いてみて欲しいです。



*5 このツアーがきっかけで、『ゼア・アンド・バック』への参加が決まったようですが、ベックからは相当に影響を受けたらしく、自作曲の殆どがベック風で、特に、教則ビデオ1本目冒頭の『アウトバック』という曲なんか、あまりにも『スペースブギ』にそっくりです。
 まあ、ベックの『スペースブギ』自体が、ビリー・コブハムの『スペクトラム』1曲目の『クアドラント4』のパクリですが(苦笑)。
 本当は、ソロアルバムも教則ビデオも、ベックに弾いてもらいたかったんでしょう。ソロアルバムは、ドラム以外全部シンセサイザーでしたが、教則ビデオでは、あのアンソニー・ジャクソンがベースを弾いてる位ですから、当然、ベックにもオファーは出してたのだと思います。もし、実現していたら、凄い事になってたでしょう…。


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