ただし、ドラマーとしての旬は、『パワーステーション』の1stまでで終わってますので、それ以前のプレイを聴いた事のない人は、先入観を捨ててから読んで下さい。(*1)
じゃないと、たぶん、「???」になっちゃうと思います。
この人のスタイルを一言でいうと、ジョン・ボーナムみたいな、白人ハードロック・ドラマーのパワーと、黒人の強力なグルーヴ感を両立させたドラミング…という事になるでしょう。
1980年代後半以降は、デニチェンやチャド・スミスを筆頭に、この系統のドラマーも増えて来ましたが、80年代の始め頃は、まだ、白人系は8、黒人系は16と、ハッキリ分かれてたので、非常に新鮮でした。
特にこの人が素晴らしかったのは、ジョン・ボーナムが好きだったためか、キックが非常に強力だった事。
黒人系のドラマーは、白人系に比べて、キックの比重が小さいと感じるんですけど、この人のキックは、一発・一発が、強烈なボディ・ブローで、お腹にズドンと響きます。
僕がトニー・トンプソンを初めて聴いたのは、18才の頃、ラジオで、ダイアナ・ロスの『アップサイド・ダウン』がかかった時でしたが、まさに秒殺!即座にクギ付けでした。
イントロの、ギターのカッティングとハイハットのユニゾンが、すでに、タダモノじゃないグルーヴで、そこに、ポーカロ風に、キックのラフをからめた、スネアとクラッシュのアクセントが入ったら、もう、ノックアウト。わずか2秒殺ですよ(笑)。
曲調自体は典型的なディスコ系だから、ハイハットはハネた16を刻んでるのに、キックとフィルのフレージングはロックそのものという、それまで耳にした事のないドラミング。
しかも、フィルやアクセント、キメの部分になると、外れるギリギリまで突っ込んだり、タメたり。あるいは、ハネてる曲の中に突然、まったく真四角なフィルインを入れてみたり。
特に、CDでは2:39秒あたりに出て来るフィルインの、とんでもないタメ具合には、完全にやられました。すぐにレコード買って来て、何度も、何度も、聴きまくりました。
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