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★ マイ・フェイバリット・ドラマー:トニー・トンプソン


残念ながら、今は亡き人ですし、知らない人も多いかと思いますが、トニー・トンプソンは、1980年代に一世を風靡した『パワー・ステーション』のドラマーとして、有名になった人です。


ただし、ドラマーとしての旬は、『パワーステーション』の1stまでで終わってますので、それ以前のプレイを聴いた事のない人は、先入観を捨ててから読んで下さい。(*1)

じゃないと、たぶん、「???」になっちゃうと思います。

この人のスタイルを一言でいうと、ジョン・ボーナムみたいな、白人ハードロック・ドラマーのパワーと、黒人の強力なグルーヴ感を両立させたドラミング…という事になるでしょう。

1980年代後半以降は、デニチェンやチャド・スミスを筆頭に、この系統のドラマーも増えて来ましたが、80年代の始め頃は、まだ、白人系は8、黒人系は16と、ハッキリ分かれてたので、非常に新鮮でした。

特にこの人が素晴らしかったのは、ジョン・ボーナムが好きだったためか、キックが非常に強力だった事。

黒人系のドラマーは、白人系に比べて、キックの比重が小さいと感じるんですけど、この人のキックは、一発・一発が、強烈なボディ・ブローで、お腹にズドンと響きます。

僕がトニー・トンプソンを初めて聴いたのは、18才の頃、ラジオで、ダイアナ・ロスの『アップサイド・ダウン』がかかった時でしたが、まさに秒殺!即座にクギ付けでした。

イントロの、ギターのカッティングとハイハットのユニゾンが、すでに、タダモノじゃないグルーヴで、そこに、ポーカロ風に、キックのラフをからめた、スネアとクラッシュのアクセントが入ったら、もう、ノックアウト。わずか2秒殺ですよ(笑)。

曲調自体は典型的なディスコ系だから、ハイハットはハネた16を刻んでるのに、キックとフィルのフレージングはロックそのものという、それまで耳にした事のないドラミング。

しかも、フィルやアクセント、キメの部分になると、外れるギリギリまで突っ込んだり、タメたり。あるいは、ハネてる曲の中に突然、まったく真四角なフィルインを入れてみたり。

特に、CDでは2:39秒あたりに出て来るフィルインの、とんでもないタメ具合には、完全にやられました。すぐにレコード買って来て、何度も、何度も、聴きまくりました。





*1 今回、ネットでちょっと調べてみたら、この人が下手だと本気で思ってる人が少なくないみたいで、ちょっとショックでした。
 確かに、『パワーステーション』以降は、グルーヴが固くて、得意技の「タイミングずらし」も、むしろリズムが狂ってるように聴こえます。そういえば、僕も『パワーステーション』はCD買ってないですからね…。


デビッド・ボウイが、83年の『レッツ・ダンス』で、オマー・ハキムと、この人を起用した時も、「そうだろう、そうだろう!今最高のドラマーは、この二人だよ」と思ったもんです。(*2)

まるっきり私事ですが、僕は若い頃、「トニー」を愛称にしてた時期があって、これって実は、ウイリアムスというより、トンプソンのトニーだったんです。そのぐらい、ハマってました。

ちょうど当時、(ハービー・メイソン+ナラダ・マイケル・ウォルデン)÷2な感覚で、ロックを叩けないだろうか?と思っていた所へ、実在する、理想的な解答として、この人が登場したから、飛びついたんです。

でもねえ…、当たり前だけど、そんなに簡単には、真似出来ないんですよ(苦笑)。「ずらす」っていうのは、やっぱり、まずはジャストを完璧に体得してないと、出来ない。

だから結局、僕の場合は、バンドのメンバーに迷惑かけた上に、「タイミングが狂ってる」と思われるだけでした(爆笑)。

いや、本人だって、『パワーステーション』以降だと、リズムが狂ってるようにしか聴こえなかったりしますからね…。




*2 残念ながら、トニー・トンプソンは、既に旬が終わりかけてて、オマー・ハキムのプレイがスムースなだけに、グルーヴが固く聴こえますし、正直イマイチです。
 あと3年早かったら、オマー・ハキムと比較しても、聴き劣りしなかったでしょう。


実は、ようやく最近になって、3曲だけですけど、本家シックでの(初期の頃の)トニー・トンプソンを聴いたんですよ。

そしたら、タイミングずらしは全然やってなくて、ものすごくナチュラル、かつ、正確なタイムで、気持ちよ〜く曲をグルーヴさせてて、あ〜、やっぱりそうだったんだ…と(苦笑)。

もともと、ディスコ向けの曲が売りで、その世界で認められたバンド(シック)で叩いてたドラマーなんだから、リズムが悪いわけないんですよ。

なので、『パワーステーション』以降しか聴いてなくて、「リズム感が悪い」とか思っている人には、ぜひ、初期のシックや、『ダイアナ』でのプレイを聴いてみることをオススメします。

この人の本領は、やはり、「極上のグルーヴ」が第一だと、僕は思いますので。


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